量子アニーリングマシンを使ってPQCを突破することってできないの?

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質問

量子アニーリングマシンを使ってPQCを突破することってできないの?


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解答

結論からいうと、現時点では量子アニーリングマシンを使ってPQC(耐量子計算機暗号)を突破する、というのは基本的にできません

そして重要なのは、

「量子コンピュータなら何でも暗号を破れる」わけではない

という点です。

そもそも量子アニーリングとPQCは相性が違う

量子コンピュータには大きく、

量子ゲート方式    │    ├─ Shorのアルゴリズム    └─ Groverのアルゴリズム         量子アニーリング方式    │    └─ 組合せ最適化など

という違いがあります。

現在PQCが特に警戒しているのは、量子ゲート方式の量子コンピュータです。

例えばRSAやECCについては、

Shorのアルゴリズムを十分大規模な量子ゲート型コンピュータで実行できれば破れる

というのがPQC移行の大きな理由です。


量子アニーリングは何をしている?

量子アニーリングはざっくりいうと、

非常に複雑な組合せ問題の「良い解」を量子的な物理過程を利用して探索する

ものです。

例えば、

Aを選ぶ?Bを選ぶ?Cを選ぶ?Dを選ぶ?

という組合せが大量にある問題を、

最もエネルギーが低い状態        ↓最適解

として探すような発想です。

そのため、

  • スケジューリング

  • 組合せ最適化

  • 経路探索

  • ポートフォリオ最適化

などが代表的な用途です。


「暗号鍵を総当たりすればいいのでは?」

ここで少し可能性が出てきます。

例えばAES-128の鍵を探す問題を、

「正しい鍵なら暗号文を復号したとき意味のある平文になる」

という最適化問題に変換できるなら、

量子アニーリングで鍵探索を高速化できないか?

という研究は当然考えられます。

ただし、これは

「PQCを突破する決定的な方法」

にはなっていません。


そもそもPQCはこういう攻撃を想定している

PQCは、

量子コンピュータでも効率的に解けることが分かっていない数学問題

を利用します。

例えば代表的なものが格子問題です。

非常に巨大な格子        ↓特定の条件を満たすベクトルを探す        ↓非常に難しい

この種の問題について、

Shorのアルゴリズムのような「指数的な高速化」が知られていない

ことが重要です。


量子アニーリングなら格子問題を解けるのでは?

ここが研究上面白いところです。

格子問題や暗号解読問題の一部を、

暗号問題 ↓最適化問題 ↓QUBO ↓量子アニーリング

に変換して解こうとする研究はあります。

しかし、

「QUBOに変換できる」=「効率的に解ける」

ではありません。

巨大な問題をQUBOに変換すると、

  • 変数数が膨大になる

  • 制約を表現するための補助変数が必要になる

  • 埋め込みが難しくなる

  • 量子ビット間の接続制約が問題になる

  • 解が本当に最適か確認する必要がある

などの問題が出てきます。


むしろ現在の量子アニーリング機には大きな制約がある

例えばD-Waveのような量子アニーリングマシンを考えても、

「巨大な暗号問題をそのまま投入して解読」

とはいきません。

現実には、

暗号問題 ↓数学的な変換 ↓最適化問題 ↓QUBO化 ↓量子マシンに埋め込み ↓多数回サンプリング ↓結果を検証

という工程が必要です。

しかも、問題サイズが大きくなるほど厳しくなります。


ではPQCは「量子アニーリングには強い」と言える?

単純にそう断言するのも少し違います。

PQCの安全性評価では、特定の量子コンピュータ方式だけでなく、

既知の古典・量子アルゴリズムに対して十分な計算量が必要

という観点で評価します。

そのため、

「量子アニーリングなら絶対安全」

ではありません。

新しいアルゴリズムが発見されれば話は変わります。


RSA/ECCとの違いを見ると分かりやすい

RSA/ECCの場合、

古典コンピュータ    ↓難しい量子ゲートコンピュータ    ↓Shor    ↓効率的に解ける

という非常に強力な攻撃が知られています。

だからPQCへ移行します。

一方、PQCでは、

古典コンピュータ    ↓難しい量子ゲートコンピュータ    ↓今のところ効率的な攻撃は知られていない量子アニーリング    ↓今のところ暗号を実用的に突破する方法はない

という状態です。


そして「量子アニーリング=量子版総当たり」でもない

ここも重要です。

量子アニーリングは、

すべての候補を並列に調べて正解を一瞬で見つける装置

ではありません。

よくある「量子コンピュータなら全部の組合せを同時に計算できる」という説明はかなり誤解を招きます。

量子アニーリングの場合は特に、

問題をエネルギー最小化問題として表現し、その低エネルギー状態を探索する

というものです。

したがって、暗号鍵探索に使ったからといって、鍵空間が単純に

2^256↓256

になるような魔法が起きるわけではありません。


ではPQCを本当に脅かすのは何?

現状最も重要なのは、

十分大規模で誤り訂正された量子ゲート型コンピュータ

です。

そして、

  • Shor系アルゴリズム

  • Grover系アルゴリズム

  • その他の新しい量子アルゴリズム

などが問題になります。

特にPQCでは、「量子コンピュータがいつ実用化されるか」だけでなく、「新しいアルゴリズムが発見される可能性」も含めて安全性を考える必要があります。

なので、

「量子アニーリングマシンでPQCを突破できないの?」

への答えは、

「研究対象にはなり得るが、現在の量子アニーリング技術でPQCを実用的に破ることはできない。PQCが主に想定している脅威は、ShorやGroverを実行できる大規模な量子ゲート型コンピュータ」

となります。



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