非常に良い質問です。
確かに「ネットワーク」という言葉が出てくると、まず思い浮かぶのは「インターネット回線=ISPの責任」です。
しかし、IaaSのSLA(Service Level Agreement)で“ネットワークまで責任を持つ” というのは、
その「ネットワーク」が クラウド事業者の管理領域内のネットワーク を指しているためです。
順を追って整理します。
1. 「IaaSのネットワーク責任範囲」とは何か
IaaS(Infrastructure as a Service)では、ユーザーに提供するのは主に以下の層です:
| 層 | 管理責任者 | 内容 |
|---|
| アプリケーション層 | ユーザー | アプリ、設定、データ |
| OS層 | ユーザー | ゲストOS、ミドルウェア |
| 仮想化層 | IaaS事業者 | ハイパーバイザーなど |
| 物理サーバ層 | IaaS事業者 | 実際の物理マシン |
| ストレージ層 | IaaS事業者 | ディスクアレイなど |
| ネットワーク層(内部) | IaaS事業者 | データセンター内部のネットワーク(L2/L3スイッチ、ルータ、ロードバランサなど) |
| インターネット回線 | ISP・通信事業者 | 外部インターネット接続部分 |
つまり、「SLAにおけるネットワーク」とは
IaaSプロバイダが管理する内部ネットワーク構成(仮想ネットワーク含む) のことを指します。
2. どんな範囲まで責任を持つのか
IaaS事業者のSLA対象となる「ネットワークの責任範囲」は次のように定義されます:
したがって、
「ユーザーがインターネットにアクセスできない」
という場合でも、原因が
という切り分けになります。
3. ISPの責任との違い
ISP(Internet Service Provider)は、
IaaSデータセンターの外、つまり 公衆インターネットの領域 の通信を保証します。
したがって、
IaaS事業者がSLAで「ネットワークを含む」としても、
それは「クラウド内ネットワークが安定して動作する」という意味に限られます。
4. 例:AWSのSLAの考え方
AWSのSLA(例:EC2やVPCなど)では次のような記述があります:
AWSは、Availability Zone内のインスタンス間通信やVPC内部の接続について高可用性を保証する。
インターネット経由の通信(ISP・第三者回線)はSLAの対象外。
つまり、「AWSネットワーク=AWS管理下の内部ネットワーク」 という定義でSLAを適用しているわけです。
5. まとめ
| 項目 | 責任者 | SLA対象 |
|---|
| 仮想マシンの稼働 | IaaS | 対象 |
| データセンター内ネットワーク | IaaS | 対象 |
| 仮想ネットワーク(VPC等) | IaaS | 対象 |
| インターネット回線(ISP区間) | ISP | 非対象 |
| 利用者のLAN・PC・設定 | 利用者 | 非対象 |
結論
IaaSのSLAにおいて「ネットワークまで責任を持つ」というのは、
自社が管理できる内部ネットワークインフラまでの可用性を保証する という意味であり、
インターネット回線そのもの(ISPの領域)は含まれません。
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